(改訂版2022) 

全国の学生は、職業安定法等の法令で就職差別を防ぐことが可能です。

「就職差別等についての報告書」ダウンロードは こちらから

 

全国大学同和教育研究協議会から全国の学生の皆さんへ (お知らせ)

 この掲示板は、沖縄から北海道までの全国の大学・高専等の学生の皆さんに対して、就職差別から自分を守るための基礎知識をお知らせするものです。 

就職差別から自分を守るための知識は「大学を卒業して就職活動をするときだけ」に必要なものではなく、転職や再就職の時にも必須となります。就職差別を防ぐ取り組みは、後述するように45年以上の歴史がありますが、これまで文部科学省や厚生労働省は、<学生は高学歴である><卒業時に大人である><大学には自治がある>として、公正な採用選考制度から除外して、就職時に最も大切となる<就職差別につながるおそれのある14事項>や、<男女雇用機会均等法に違反する差別事項>、また応募用紙<新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例>や<厚生労働省履歴書・様式例>(2020年7月の改正でJIS規格履歴書は廃止)の内容を教育して来なかった歴史があります。そのため、大学等の学生・就職室の教員・職員の皆さんには、何が就職差別となるか、何が違反事項になるか、基礎知識が普及していないため、就職差別や違反事項が垂れ流しの状態が続いています。

 2012年10月に全国大学同和教育研究協議会が連携する全国人権教育研究協議会は、文部科学省・厚生労働省に対して強力に働きかけ、職業安定法、男女雇用機会均等法等の法令を順守して、全国の学生の就職差別を防ぐ取り組みをするよう、強く申し入れています。 全国の都道府県に置かれた労働局は、窓口をつくると回答していますので、この掲示板で<就職差別から自分を守るため>の大切な基礎知識を習得して下さい。

例えば、2015年頃、「安保法制」に対して、反対か賛成か、街頭ではデモが行われました。賛成であろうと、反対であろうと、デモに参加しようと、参加しまいと、これらをすべて含めて、これをアンケートや応募用紙に書かせることも、面接で質問する事も、就職差別となります。それは、<就職差別につながるおそれのある14事項>の中の 9「思想」に関すること 10 「労働組合(加入状況・活動歴など)」「学生運動など社会運動」に関すること 11 「購読新聞、雑誌・愛読書など」に関すること、が禁止事項と明記されているからです。もちろんセクシュアル・ハラスメントも禁止されています。そのためこの掲示板をよく読んで、就職差別から自分を守って頂きたいのです。

全国大学同和教育研究協議会は、同和教育・人権教育の研究団体ですが、労働行政の権限を持っている訳ではありません。そのため学生の皆さんに何が就職差別になるか、基礎知識をお伝えすることは出来ますが、このインターネットの掲示板や電話で、差別事例の解決を図る事は出来ません。このことは、先にお断りをしておきます。 しかし、学生の皆さんが、各大学等の就職室に届け出た『就職差別等についての報告書』(用紙はこの記事に添付)のコピーを、本協議会に郵送して下さるであれば、お名前を匿名にして、悪質な就職差別の事例は、労働行政に反映するよう活用させて頂きます。この点のご了解もよろしくお願い致します。

 この掲示板の目次

1 就職差別から自分を守るために 全国の大学・高専の学生の皆さんへ

2 「就職差別等についての報告書」についての説明と記入上の注意

3 「就職差別等についての報告書」

4  就職差別を防ぐ取り組みの歴史と、大学等の学生の就職問題について 

5 「職業安定法」で、就職差別を防ぐことができる。

6 応募用紙の書き方  

  「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」

  「厚生労働省履歴書・様式例」(「JIS規格履歴書 参考例」は2020年7月廃止) 

7 面接について 

8 全国大学同和教育研究協議会とは

9 厚生労働省に対して、就職応募用紙から「性別欄」の削除を求めます。

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1 就職差別から自分を守るために  全国の大学・高専の学生の皆さんへ

 「公正な採用選考」に違反するとはどのようなことですか? 

「就職」は、一人の人間が生きていくうえできわめて重要なものです。 日本国憲法でも「職業選択の自由」が保障されており、誰でも自由に自分の適性や能力に応じて職業を選べることができますが、そのためには求人企業が就職受験する学生の適性・能力等を基準として、客観的・合理的な採用選考を行うことが大切です。そこで大学をはじめ、国(厚生労働省)や、都道府県では、求人企業・団体に対して次のようなことをお願いしています。

 ◆「人を人としてみる」人間尊重の精神、すなわち応募者の基本的人権を尊重する。

 ◆ 応募者のもつ適正・能力を基準として採用選考を行う。(特定の人を排除しない)

 ◆ 応募者に広く門戸を開く

 その上で、就職差別を防ぐために、次の14事項が違反事項として禁止されました。

 さらに、性別による募集・採用における差別の禁止についても定められました。

 就職差別につながるおそれがある14事項について (禁止事項)

〔本人に責任のない事項〕

1 「本籍・出生地」に関すること。

2 「家族に関すること」(家族の職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)

3 「住居状況」に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)

4 「生活環境・家庭環境など」に関すること

〔本来、自由であるべき事項〕

5 「宗教」に関すること

6 「支持政党」に関すること 

7 「人生観・生活信条など」に関すること

8 「尊敬する人物」に関すること

9 「思想」に関すること

10 「労働組合(加入状況や活動歴など)」「学生運動など社会運動」に関すること

11「購読新聞、雑誌・愛読書など」に関すること

〔採用選考の方法に関する事項〕

12 身元調査などの実施

13 「本人の適正・能力に関係ない事項を含んだ応募書類」の使用(2021年からの表記)

14 「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」の実施

 性別による募集・採用における差別の禁止について

労働者の募集・採用において性別によって差別することは、男女雇用機会均等法第5条で禁止されています。

  1. 募集・採用の対象から男女のいずれかを排除すること
  2. 募集・採用の条件を男女で異なるものとすること
  3. 採用選考において能力や資質の有無等を判断する場合にその方法や基準について男女で異なる取り扱いをすること
  4. 募集・採用に当たって男女のいずれかを優先すること
  5. 募集・採用に関する情報提供について男女で異なる取り扱いをすること

 また、性別以外の事由を要件とする措置であっても実質的に性別を理由とする間接差別となる恐れのあるものについては、これを合理的な理由がない場合に講じることは男女雇用機会均等法第7条で禁止されており、その具体的な内容として次のような事項が男女雇用機会均等法規則第2条で定められております。

 ア 募集・採用に当たって労働者の身長・体重・体力を要件とすること

 イ コース別雇用管理における総合職の労働者の募集・採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることを要件とすること

これまでの学生の皆さんから提出された『就職差別等についての報告書』においては、「本籍・出生地に関すること」「家族に関すること(家族の構成、家族の学歴、職業、家族の収入、家族の資産など)」「住居・住居環境に関すること」についての質問など「本人に責任のない事項」に関わる問題事象が数多く報告されています。

 これらの事柄に関する質問ついては、面接時に行うことはもとより、会社独自の履歴書やインターネット求人で見られるエントリーシート、会社説明会で配布されるアンケートにおいて、記載項目として設けることも「公正な採用選考」に反する問題事象となります。

 また、思想・信条や宗教など「本来、自由であるべき事項」についても同様に、面接時に質問することや応募提出書類等の質問記載項目とすることは問題事象になります。

 受験時の「健康診断書」提出も、必要不可欠な業種を除いて原則禁止されています。

(入社してから後で、雇用主が「健康診断」を行うことは、労働安全衛生規則第43条で義務付けられています。)

〇 就職差別や違反があった場合は、どうすればよいか

 「就職差別につながるおそれのある14事項」や、「性別による募集・採用における禁止事項について」は、求人企業が遵守すべきものとして、憲法、職業安定法、男女雇用機会均等法等の法令で定められていますが、この内容は同時に、就職応募する学生の皆さんが、就職差別、及びこれにつながる違反事項から、自分の身を守るための武器ともなります。応募用紙の記入事項や採用試験・面接等において、違反あるいは就職差別となる事項があれば、各大学・学校の就職室を通して、都道府県の商工労働部の窓口へ、さらに厚生労働省の労働局かハローワークに届け出て下さい。これらの機関は、違反した雇用主に対して注意・啓発・行政指導して学生を守る責務があります。

次ページの『就職差別等についての報告書』に記入すれば、これが「チェック用紙」となっていますので、これをダウンロードして活用してください。この用紙に記入すれば、<何が就職差別になるか>、<どこに違反事項があるか>をチェックすることが出来ます。就職試験の応募用紙の記入事項や、受験内容、面接試験等々で聴かれた事など、体験したことを思い出して記入してください。特に悪質な就職差別、違反事項については、厚生労働省の労働局・ハローワークが、雇用主に対して行政指導しなければなりません。悪質な雇用主には罰則(6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)も設けられております。受験する学生の皆さんが、自分と後輩のために、就職差別や違反事項を見逃さず、届け出ることが、就職差別を減少させる上で最も有力な力となります。特に、何回も(何十回も)受験して内定がもらえないで悩んでいる人は、受験した企業・団体1社に1枚の『就職差別等についての報告書』を書いて、出来るだけ多くの受験の実態をチェックして下さい。その体験を明るみに出すことが、<公正な採用選考制度>を維持することに繋がります。

雇用主に違反質問があり、不合格になっている時は、勇気を出して届け出るようにしましょう。就職室から、その取り組みの結果を受け取って下さい。なお実際の「問題事象報告」用紙が、各学校で違っている場合は、次の記事にある「就職差別等についての報告書」用紙を使って、就職差別の実態を伝え、大学等の就職室や学生課等に提出し、企業等に必要な是正措置を求めてください。なお各大学等で不親切な場合は直接、各県にある厚生労働省労働局:公正採用担当課に連絡してください。 

2 『就職差別等についての報告書』についての説明と記入上の注意

「就職差別等についての報告書」の提出をお願いする理由

◎ 憲法では、すべての人に「職業選択の自由」を保障しており、誰もが自由に自分の能力や適性に応じて職業を選ぶことができるよう、「就職の機会均等」が保障されることが大切です。そのために職業安定法第5条の4及び「求職者の個人情報取扱いについて(労働大臣指針)」では、採用応募・選考時において、特別な職業上の必要性がないにもかかわらず、本人の適性・能力とは関係ない家族の状況・居住環境や本人の自由であるべき思想・信条等について、質問・情報の収集をすることを禁じています。また男女雇用機会均等法でも採用・選考時において、男女のいずれかを排除、不利な取り扱いをすること、男女のいずれかを対象にすることや優遇することが原則、禁じられています。従って、この『就職差別等についての報告書』は、これらの観点から学生の皆さんが、就職活動を行う中で問題となる事象を把握するために提出を求めるものです。

提出された『就職差別等についての報告書』は、今後の求人企業への啓発に役立てるとともに、大学等が行政機関と協力・連携して直接、当該求人会社・団体(官公庁関係を含む)への改善を要請することになります。なお、当該求人会社・団体(官公庁関係を含む)への改善を要請する場合は、報告者の氏名等は匿名で行うなど、本人が不利にならないよう、配慮して行います。

<記入の注意>  

◎ 該当する事項に ㇾ を付けるとともに、「その他」等の記述欄は、出来るだけ詳しく記入してください。また、各設問項目については、下記の注意事項を読んで記入してください。

注1)「履歴書」については、求人企業に対し、大学等から指定された履歴書「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」での対応をお願いし、就職差別につながる質問項目のある会社独自の用紙または類似する書類の提出を求めてはいけないことになっております。

注2)戸籍謄(抄)本の提出や、採用選考時に合理的な理由なく、一律的に健康診断書の提出を求めることは、してはいけないことになっています。なお、戸籍(抄)謄本の提出については、内定後であっても、提出をもとめられた場合は記入し、「□内定後」にチェックして下さい。

注3)合理的な理由なく男女で異なった募集・採用選考をすることは、性別による差別として禁止されています。

注4)面接の際においても、本人の適性・能力とは関係のない個人情報に係る質問や性別による差別につながる質問は、してはならないことになっています。

注5)「身元調査」とは、本人の同意なく自宅の近隣に問い合わせるなどして家族の状況・住宅環境等や、思想・信条等を調査することを言います。

注6)採用選考時において、職務遂行上、必要不可欠な場合を除き、一律に血液検査などの健康診断を行うことは、結果的に本人の適性・能力とは関係ない事項を把握することになり、就職差別につながるおそれがあります。

 『就職差別等についての報告書』 ここに用紙を添付しています。

4 就職差別を防ぐ取り組みの歴史と、大学等の学生の就職問題について

 戦後、憲法が制定されて、その第14条で社会的差別が禁止されても就職差別はまかり通っていました。1950年代、最も多かった中学卒業生の就職差別について、中学校の教師が憲法と正義感で闘い、生徒のための就職対策連絡協議会が各地で結成されます。1970年代になると高校進学率が80%に達していますが、この高校生の就職差別に対して、大阪府、兵庫県などの高校教師が起ち上がり、部落差別や貧困による就職差別と闘います。そして大阪府の教師と職業安定所(ハローワーク)職員が連携して、差別項目のない応募用紙が発案され「大阪府統一用紙」が作られますが、1971年には「近畿統一用紙」となり広がりました。しかし同年、国家公務員を採用する人事院近畿事務局が悪質な部落差別や貧困による就職差別をしたため、兵庫県の同和教育運動を担う教師や部落解放運動によって、その差別意識が徹底的に批判され、「近畿統一用紙」は「全国統一用紙」と認められます。

 また徳島県では、高校教師が「就職差別につながるとされる14項目」をまとめ、これが評価されて当時の労働省の行政指針となりました。この高校生のための「全国統一用紙」に続いて、1974年から一般求職者のための履歴書は、「JIS規格履歴書・様式例」となりました。(その後、2020年7月より「厚生労働省履歴書・様式例」となり「性別欄」の記入が「任意もしくは未記入」となり、「JIS規格履歴書・様式例」は廃止されました。)そして、1975年から続く「部落地名総鑑差別事件」の渦中の1983年から「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」という応募用紙も作られて、就職差別を防ぐ取り組みの土台が築かれました。この応募用紙の改善と、「就職差別につながる14項目」は、現在の厚生労働省に引き継がれ、文部科学省も認めて、「公正採用選考システム」と名付ける制度となります。そして中学新卒者、高校新卒者には徹底して「就職差別を防ぐ基礎知識」が教えられ、受験すると、直ちに当時の「受験報告書」を書かせて確認し、就職差別や違反がないか確めて、差別があると、学校の進路指導教員、都道府県教育委員会の担当教員、ハローワークの職員が連携して、企業・雇用主の行政指導に当たり、就職差別は激減するようになりました。しかし、厚生労働省や文部科学省は、1970年代から今日に至るまで、大学等の学生、教員、職員に対しては、「就職差別につながる14項目・現在は14事項」や「新規大学卒業予定者用標準的事項の参考例」および過年度卒業生や一般求職者のための「厚生労働省履歴書・様式例」の説明を怠って来ました。その言い訳は、<大学等の学生は高学歴である><卒業時に大人である><大学には自治がある>というものです。そのため、今日においても全国で大学等の学生には、<何が就職差別となるか>という基礎認識が指導されておらず、大学等の就職室職員・教員にも基礎知識が普及していないため、就職差別が続いています。

 これに対して、全国人権教育研究協議会は2012年10月、特別に厚生労働省・文部科学省と交渉して、「職業安定法の何処に学生を別にすると書いてあるか!」と詰め寄り、この交渉以来、「都道府県に配置している労働局を通して取り組みます」と弁解するようになっていますが、いまだに学生向けの取り組みは極めて不十分です。 そこで全国大学同和教育研究会では、インターネットで2008年に改善された「就職差別につながるおそれのある14事項」と「男女雇用機会均等法」で禁止されている差別事項を全国の学生の皆さんにお知らせしています。これを知っておくと、就職差別から自分を守るものともなります。

5 「職業安定法」で、就職差別を防ぐことができる。

 1981年に大阪府では、府内約80大学等が参加して「大阪府下大学等就職問題連絡協議会」(略称・大就連)が結成されて、大阪府商工労働部雇用推進室、大阪労働局が連携の上、大学の学生のための取り組みを進めて大きな成果をあげています。これを参考に、全国の大学等の就職室の任務、都道府県の商工労働部などの労働行政の任務、それに厚生労働省の地方機関である労働局の任務等に触れながら、全国の学生の皆さんが「職業安定法」から学ぶべきこと、どのように行動すればよいか、ということを考えてみます。

➀ 大学等(大学院、短大、高専、各種専門学校を含む)の就職室は、「職業安定法」により「無料職業紹介事業者(届出制)」として、就職業務を行うことが認められています。また、これはハローワークと同様に、各大学等の就職室においても、学生が受けた「就職差別」または「就職差別につながるおそれのある14事項」に違反する行為や「男女雇用機会均等法」で禁止されている「就職差別・違反行為」について、求人企業に対して啓発指導の権限が委嘱されています。また、悪質な就職差別を繰り返す求人企業の場合は、都道府県に置かれた労働局に訴えて、罰則が適応される事もあります。(6か月以下懲役または30万円の以下の罰金)    

➁ そのため大学等が、学生から「問題事象」報告を受けて相談をすれば、大学等の就職室が直接、求人企業に対して調査・指導しなければ「無料職業紹介事業者」としての任務を放棄している事になります。言葉を変えれば、この場合は、大学等の就職室が「無料職業紹介事業者」としての責務を果たさないということになりますので、労働局から、「同事業者の許可を取消す」と、強い注意や行政指導を受けることもあります。そして現在は、厚生労働省や文部科学省が、大学等の教員、職員、学生に対して「指導してこなかった」と弁解している時代でありますので、大学等の就職室の意識にバラツキがあり、また就職室が「問題事象」を起こした求人企業への指導のノウハウが乏しい、という現実もありますので、実際的には次のような対応で行われています。

➂ 「募集要項」や「エントリーシート」等で、明らかに「問題となる資料」が入手されている場合は、先ず大学等の就職室が、直接、求人企業に対して指導を行うこと。但し問題を起こした求人企業が反抗的であったり、啓発、指導に納得しない場合等は、都道府県の商工労働部が指導を行う。それでも指導に従わない場合は、労働局(ハローワーク)が、立入り調査権限も活用した調査・行政指導を行うという対応がなされています。

➃ 「採用面接」等で違反となることを「質問した・していない」と水掛け論になる可能性がある場合は、いきなり労働局(ハローワーク)に行政指導を、お願いする事が多くなります。

➄ また、都道府県の商工労働部や人権課、私学大学支援課などの労働行政では、「職業安定法」「男女雇用機会均等法」に基づいて、学生の雇用に関する事や公正採用選考に関する業務をしなければなりません。そのため、各大学の就職室を通して就職差別や違反事項を受け取ると、都道府県行政の管轄下の企業や雇用主に対して、注意、啓発、行政指導をするという事になります。そのためにも、学生が就職差別や違反を見逃さずにとらえて、『就職差別等についての報告書』を書いて、これを大学等の就職室に届け出ることが極めて大切な取り組みとなります。就職室も、就職差別の問題によって、都道府県の労働行政に上げて解決を図るか、それとも労働局の行政指導を選ぶか、連携を取りながら学生を被害から守る責務があります。

⑥ 『就職差別等についての報告書』は、受験した企業(団体)等の1社について1枚書いて、必ずコピーを取っておくようにして下さい。そして、大学等の就職室へ出して下さい。受験が何か所か続けて行われる場合は、メールで就職室に送れるよう準備しておきましょう。違反や悪質な差別があった場合には、就職室から返事が聞き出せるように、担当者の名前を聞き、連絡が取れるようにしておきましょう。

⑦ 「就職差別につながるおそれのある14事項」について解説を追加します。 

 1973年、最初に徳島県でまとめられた時には、「就職差別につながるとされる14項目」でした。これが旧労働省で、「就職差別につながる14項目」とされ、1974年から2007年まで使われて来ました。その後「男女雇用機会均等法の改正」や「職業安定法の改正」などを受けて、2008年より、「就職差別につながるおそれのある14事項」となりましたが、内容においては、14項目の内容を全て生かして、表記で短縮して、事項の10番目に「労働組合、学生運動など社会運動」に関すること。11番目に「購読新聞、雑誌、愛読書」に関すること、14番目に、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施、の3事項の禁止が追加されています。

⑧ また、国家公務員、地方公務員、公立学校教員採用試験について、近年、違反や就職差別が多発していますので解説します。それは国家公務員も地方公務員も教育委員会も、そもそも人権教育を進めて啓発する立場にありますので、「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」や「厚生労働省履歴書・様式例」という応募用紙を使わないで、「就職差別につながる恐れのある14事項」の違反にならない範囲で、独自に応募用紙をつくることが認められています。ところが、公務員、教員は、何が就職差別となるか教育されておらずに採用試験を受験して、合格して、その後採用担当になるため、応募用紙や試験の実施において違反や就職差別が多くなっています。現在の学生は、この事情も認識した上で、公務員試験であっても、違反を見逃さず、違反があると表に出して、就職差別と闘ってほしいと考えます。

⑨ あってはならない事ではありますが、学生の皆さんが自分の大学等の就職室へ行って、『就職差別等についての報告書』を提出しても、黙って受け取るか、受け取って貰えない場合は、この解説文章を就職室長に見せて、再度交渉してみて下さい。 そして、あまり頼りにならない雰囲気であれば、あるいは問題となっている差別が悪質な就職差別と推定されるであれば、もう1枚の『就職差別等についての報告書』を準備して、都道府県の労働局・職業安定部・職業安定課、もしくはハローワークの学生担当の窓口で直接訴えてください。

 就職差別した企業の行政指導をして貰って、結果を聴かせて貰うようにお願いする事も忘れないで下さい。1件の就職差別を解決すると、その企業の失敗が教訓となり、多くの就職差別を防ぐ事につながります。

⑩ 数年前から、厚生労働省により、大学等の無料職業紹介所が有料職業紹介所と連携することが許可されています。有料職業紹介所と学校の無料職業紹介所が、共に公正な採用選考の原則を守り、学生の希望が生かされることが求められます。しかし、学生と個別企業のやり取りは、パスワードのかかるネット上という閉ざされた環境の中で行われることから学生が上の⑨までの就職差別を見抜く基礎知識が無ければ、就職差別があっても、これが見逃されてしまいます。

そのため就職する学生の皆さんは、この文章の 1 就職差別から自分を守るために・全国の大学・高専の学生の皆さんへ の記事と、3 「就職差別等についての報告書」を書いて下さい。その「説明と記入上の注意」を踏まえて「就職差別等についての報告書」を書くということは、雇用主(企業や団体・公務員を含めて)の就職過程のやり取りや、面接の内容において、何処に差別事項や違反事項・不適切な内容があるか、これを明るみに出す、ということです。これを大学等の就職室や、各都道府県の労働局・ハローワークに伝えるだけで、大きく前進します。それは、就職活動をするひとりの学生だけの問題ではなく、多くの学生のためになることであり、引いては、雇用主全体の就職環境を整える上でも、極めて重要な取り組みと言えます。就職試験を受ける学生の皆さんは、何が就職差別となるか、よく勉強して、自信をもって受験して下さい。

6 応募用紙の書き方

 学業を終えて新規に就職する学生のための応募用紙を「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」と言います。これに対して「厚生労働省履歴書・様式例」は、学歴がどうであれ、一般求職者として転職や再就職するために広く活用されています。この二つの応募用紙は、<参考例><様式例>となっていて、「就職差別につながる恐れのある14事項」(以下14事項と略称)に違反しない範囲で若干の変更を認めています。<志望の動機欄>を<自己アッピール欄>に換えたり、<趣味欄>を省いたりすることです。しかし、禁止されている<家族欄>や<愛読書欄><健康診断書欄>を作ることなどは重大な違反となります。「企業のエントリーシートには、このような重大な違反がみられる」という報告が多数ありますので、学生の皆さんが、うえの二つの応募用紙が設けられている事と<14事項>の内容を、よく理解して、企業や雇用主の違反を見抜く力を養って下さい。 

また、全国大学同和教育研究協議会は、セクシュアル・マイノリティの人々の訴えを受けて、すべての就職応募用紙の「性別欄の廃止」を、政府・厚生労働省に訴えています。この内容については、この文章の最後に記載しています。

「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」」及び「厚生労働省履歴書・様式例」ダウンロードはこちらから

「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」

〇 記入時の年月日が元号となっています。これは、政府の意向と受け止めますが、応募用紙は「参考例」なので、求職先の企業の習慣に合わせて西暦で書くことは認められます。

〇 大学等に入学する前に就職していても、学業の途中で、休学・留年等があっても、新規に大学等を卒業する時は、この応募用紙を使います。 新規採用は優遇される傾向があるので、大学等の学生は、この用紙を活用して下さい。

〇 「学歴・職歴」を書く欄は13行もありますが、学歴では、小学・中学の校区は狭いため、雇用主が学生の生活環境等を調べる違反を誘発する恐れが強いので、最終学歴の入学と卒業を書くことが望ましいと考えます。また高校の学歴も書かない方が望ましいと考えます。「高等学校卒業程度認定試験」を受けて大学に合格して、卒業を迎えて就職する人、在日韓国・朝鮮人学校の高級学校を卒業した人は、就職差別を受ける恐れがあるので、高校の学歴を書かないで下さい。

〇 履歴書には「年号」という欄があり、ここには西暦か元号を書くようになっています。このどちらかを選ぶことで、雇用主が学生の思想を調べる余地を残していますが、学校の歴史教育では、西暦を先に書いて、( )の中に元号を書いています。学生の皆さんは、就職を希望する企業・団体がどのような年号の文書を使っているか、外資系かそうでないかという事を考慮して判断して書いて下さい。就職室の職員が一方的に決めることは、違反です。

〇 「職歴」については、アルバイトは含めずに書いて下さい。自分に不利にならないように心がけて下さい。

〇 「自己紹介書」で「得意な科目及び研究課題」の欄には、ゼミナールや卒論の研究など、学習・研究した事実を書いて下さい。文章が学問的であっても構いませんが、指導者や影響を受けた人の名前を書かずに記述する事をお勧めします。人名は誰であれ、学生の評価と雇用主の評価が、一致するとは限らないからです。

〇 「クラブ活動 スポーツ・文化活動等」については、大学等の時代の事実を書いて下さい。<14事項>のなかの5番目から11番に関わることは書かないようにしましょう。

〇 「自覚している性格」は、信頼して貰えるような書き方を考えて書いて下さい。

〇 「趣味」についても、14事項の中の5番から11番に関することは書かないで下さい。面接で詳しく聴かれて、違反質問を受けないためです。

〇 「特技・資格」は、自動車運転免許など各種の免許、資格をもれなく書いて下さい。

「厚生労働省履歴書・様式例」(2020年7月に「JIS規格履歴書・様式例」は廃止されました。)

全国の大学等では、この応募用紙しか知らない就職室長が居ることが危ぶまれています。大学等の売店などでも売っているので、学生が指導されていないことが分かります。学生が一度就職して、再就職を目指す時に使う事になります。書き方は、原則「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」と同じです。

〇 現在のところ、「性別欄の記入は任意・未記載も可能です」とありますが、この「性別欄があるだけで、セクシュアル・マイノリティの人々が、偏見で差別を受ける可能性が大きいので、全国大学同和教育研究協議会は厚生労働省に対して、「性別欄は削除」するように、この文章の最後に述べています。 

〇 「年」の書き方は、上の文章の「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」の「年」の書き方と同じです。

〇 「学歴・職歴」の欄が22行もあるのは、職歴が多くなると推測されるためです。

〇 「学歴」が項目の文字として「職歴」より先に書いていますので、最終学歴の学校名と、その入学・卒業を、先にまとめて書いて下さい。

〇 「志望の動機、特技、好きな学科、アッピールポイントなど」については、求職企業に役立つ能力、特技、を優先して書いて下さい。好きな学科も同じです。

〇 本人希望欄「給料 職種、通勤時間、勤務地 その他」については、事実を正確に書いて下さい。

〇 求職者本人の希望を述べる時には、<就職差別のつながるおそれのある14事項>を考慮しつつ、面接で「本人の適正と能力」以外のことで就職差別を誘発しないように心がけて下さい。

7 面接について

  面接の係官は、何人居たか、男女の割合はどうか、質問を受けた項目を暗記しておいて下さい。明らかに「14事項」と「男女雇用機会均等法」の禁止された項目に違反をする質問や扱いを受けた場合には、しっかり記憶するか、勇気があれば、「その質問は、就職差別につながるおそれのある14事項に違反しておりますが、それでもお答えした方がよろしいでしょうか。」と、問い返しても構いません。勇気がなくて、答えてしまったとしても、『就職差別等についての報告書』を書いて、就職室に早急に送ってください。就職室長に、直接電話して概略なりを伝えて、その上で『就職差別等についての報告書』を書いて早急に送っても構いません。また、その就職先の試験を落としたくない場合は、<実名で取り組んで下さい>と就職室長に伝えて下さい。反対に、こんな会社はもう嫌だ、と思うばあいは、<仮名で取り組んで下さい>と、就職室長に伝えて下さい。

 この場合でも、違反する企業名が伝わりますので、就職室や都道府県商工労働部及びハローワーク・労働局に伝えて、違反した企業の啓発、悪質な場合は行政指導がなされます。学生は、<その結果を聴かせてください>とお願いする権利があります。『就職差別等についての報告書』は、この取り組みの『就職差別の証拠』になると心得て大いに活用して下さい。

 全国大学同和教育研究協議会とは

 全国大学同和教育研究協議会(略称:全国大学同教)は1983年7月に発足した大学人による組織です。大学における同和教育の実践、研究を推し進めるために40大学75名が参加して設立されました。初代会長は大阪市立大学学長の木村英一、つづいて沖浦和光(桃山学院大学学長)、門田秀夫(関西外国語大学教授)、石元清英(関西大学教授)が歴任しています。部落問題を中心に、さまざまな人権問題をその研究対象としています。全国の大学の同和教育・人権教育の交流の場となっており、その推進のために内外の人々や団体と協力提携を進めています。 毎年、春秋の公開シンポジウムやフィールドワーク、たびたびインドのカースト制度研究のための現地研修旅行などをおこなっています。 現在は関西大学社会学部石元研究室に事務局を置いています。機関誌として『部落解放と大学教育』を毎年発刊しています。

9 厚生労働省に対して、就職応募用紙から「性別欄」の削除を求めます。

  現在の日本では、就職応募用紙に次の4種類があります。➀中学新卒生のための「職業相談票乙」、➁高校新卒生のための「全国高等学校統一用紙」(調査書を含めて)③「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」(成績証明書等を含めて)➃一般求職者のための「厚生労働省履歴書・様式例」です。

これらの応募用紙にはすべて「性別(  )」欄がありますが、これに(男・女)と書くことが求められましたが、セクシュアル・マイノリティの人々は、これに記入することが難しく、性の多様性を認めた「婚姻・教育・労働の権利保障が課題」となっています。(日本学術会議の提言より)

この課題に向けた運動は、諸外国から国連を通じて、日本にも伝わりましたので、英語で表現されていますが、単語の頭文字をつなげて、LGBTQ と表現されます。これを英語とカタカナ表記にして、多様な性の姿を説明すると

L=Lesbian レズビアン・・・自分を女性として女性を好きになる人 

G=Gay   ガイ・・・・・・自分を男性として男性を好きになる人

B=Bisexual バイセクシャル・・男声にも女性にも恋愛感情を持つ人

T=Transgender トランスジェンダー 生まれたときの性別と違う性別で生きようとする人

Q=Queer    クイアー・・・・性別で迷っている人

上の LGBTQ の人々は、日本では約7,8%という調査が「日本学術会議」の記述に紹介されていますが、この数字ほど多いであれば「性的少数者とは言えない」という記述もあります。そして人の性については、人の数だけ多様性があるとも言われ、また年齢と共に変化するものとも言われますので、現在は、上の呼び方で表される以上の多様な性のありかたが研究されています。

そして、大切なことは、男女の結婚と同じく同性結婚が「パートナーシップ法」などで、認められるようになりました。大まかな歴史では、1989年にデンマークで、2001年にはオランダで、2003年にはベルギーで認められました。それ以後の歴史でも、カナダ、スペイン、南アフリカ、ノルウエー、スエーデン、アイスランド、ポルトガル、アルゼンチン、デンマークと続き、2013年にはフランス、イギリス、ウルグアイ、ブラジル、ニュージーランド、2015年にはアメリカ合衆国と続き、日本でもこの年に、東京都世田谷区が「同性カップル条例」を定め、現在では国内の都市に大きく広がっています。

ここで注意すべきことは、人間の尊厳は、人種・民族を超えて、平等でなければなりません。それは、人は誰を親とするか、どのような性別で生まれるか、何時、何処で生まれるか、誰も自分で選ぶことが出来ません。そのため、何処の国においても、セクシュアル・マイノリティの人々に対して、偏見を持つ事や、差別する事は許されません。これは私たちの日常の生活において、解決を迫られている重要な課題です。

そのため私たちは、LGBTQの人々を含むすべての生徒・学生・市民の人権を守り、就職差別からも守られるように、厚生労働省に対して、すべての就職応募用紙の中の「性別欄の削除」を求めます。これを1日も早く実現して下さい。

参考資料 日本学術会議「提言・性的マイノリティの権利保障をめざして」 2017年,2020年関西外国語大学名誉教授 加藤昌彦「セクシュアル・マイノリティの人権英語小辞典」2016年